世の中には、ハゲたくてハゲるという人は殆どいないはずです。大抵の場合は自然発生的に訪れるものであり、その現実を受け入れがたく感じられるところでしょう。さらには、一旦トラブルが起こると状況を好転させるのが難しく、回復をさせたい気持ちとは裏腹に、どんどん症状は進行していってしまいます。
しかし、ハゲは不治の病というわけではない点に救いがあります。努力と対策次第では回復をさせていける可能性があり、現にかつてのボリュームを取り戻せたという人も多くいます。したがって簡単に諦める必要はないのです。
ただし、回復のためにはまず原因を知ると共に、適切な対策方法を知らなければいけません。ここでは、人はなぜハゲるのか、どのような対策を講じれば良いのかという疑問への解説を行っていきます。
ハゲの原因にはどのようなものがある?
ハゲの症状に見舞われた中、特に知りたいのが、どうしてハゲてしまったのか、その理由ではないでしょうか。この点に関しては複数の理由が関係しています。
大きく分けると、ホルモンが原因のハゲと、生活習慣によるもの、そして頭皮環境が起因するものが挙げられます。これら、いずれかの理由で髪の成長が阻害されてしまい、ハゲの状態に陥ってしまうのです。
どれが理由にしても髪の成長に影響してしまうわけですが、原因によって対策方法が違ってくる点に注意しなければいけません。画一的に対策を行えば良いというものでなく、誤った対策では上手く改善させていくことはできないのです。
まずは原因を詳しく知り、どのように回復を目指すべきなのか見極めるようにしましょう。
①ホルモンの乱れ
原因のひとつにホルモンの乱れが挙げられます。男性でも女性でもホルモンによる影響は絶大で、時には一気にハゲになってしまうこともあるのです。
このホルモンの乱れに関しては症状名があり、AGAという脱毛症で広く知られています。主に男性が関係する症状ですが、多くのケースではAGAが原因でハゲになっているとされています。つまり男性が髪のトラブルで悩まされるようになった時には、AGAを疑う必要があると言えるでしょう。
一方で女性の場合も関連があるのですが、ホルモンが関係する女性の髪のトラブルに関しては、FAGAと呼ばれています。そもそもは男性ホルモンが関係する症状ではあるものの、女性も一定割合で持っていますので全くの無関係ではないのです。
②頭皮環境の乱れ
何らかの頭皮の病気によって頭皮環境が悪化し、それがハゲのリスクに繋がっていることもあります。
いずれの病気にしても、頭皮には多大なる負担が掛かります。本来なら皮脂や水分のバランスが整い、新陳代謝も正常に行われている中、頭皮の病気に掛かっていることで正常な状態を乱されてしまうのです。すると頭皮の健全な状態が阻害されてしまう上、毛根の活動にも影響を及ぼします。髪の成長サイクルに乱れを生じさせることで、抜け毛が多くなったり脱毛が進んだりすることがあるのです。
とは言え、頭皮トラブルが原因の場合は改善することで発毛する可能性を備えています。適切な対策さえできれば改善の期待を持つことができますので、早急に対策を行っていくことが欠かせません。
③産後
女性のハゲが引き起こされやすいタイミングとしては、産後が該当します。産後にリスクがある理由は、女性ホルモンの分泌が減ってしまうからです。
女性の体は妊娠をすると女性ホルモンを活性化させる働きがありますが、出産をするとその働きが失われてしまいます。それどころか分泌が減ることで髪の成長を著しくダウンさせてしまうのです。
女性ホルモンには髪の寿命を延ばす働きがあるものの、働きが低下することで髪が抜けやすくなります。脱毛が一気に進んでしまうことも多く、産後は地肌が目立ちがちになるケースも珍しくありません。
しかし、多くの場合は一時的な症状であり、自然に回復していきます。
④その他
ヘアケアのやり方も原因になり得ますが、ひとつに誤ったシャンプーが挙げられます。例えば脱脂力の強過ぎるシャンプーを使うことで、頭皮に必要な皮脂が奪われ過ぎてしまうのです。すると頭皮の水分バランスが崩れたり、乾燥をしやすくなったりすることで髪の成長を妨げます。
整髪料を過度に使用している場合も危険です。毛穴詰まりを発生させる要因になる上、化学成分が頭皮への負担になります。さらにはシャンプーでは簡単に落ちないことで、頭皮に残留してトラブルの原因になることもあるのです。
他にも頭皮マッサージにも要注意と言えます。髪が気になり出すことでマッサージをする人も少なくありませんが、やり方を誤ることで逆効果になることもあるのです。
ハゲの種類
一口にハゲと言ってもいくつかのパターンに分類することができます。特にAGAが原因の場合は特徴的なパターンで脱毛が進むことが多く、同じ原因で脱毛が進みながらも、人によって症状の出方が違っているのです。
基本的には影響を大きく受けている人ほど顕著に症状が出る傾向があります。一方、あまり影響を受けていない場合ですと、そこまで目立つ状態にはならないこともあるのです。しかし一旦発症をするとその後に進行していく可能性が高いです。やがては目立つ状態にもなり兼ねないため、今は症状が軽いからと油断することはできません。
なお、似たようなハゲ方でも、実は原因が違っていることもあります。見極めを誤り対策も間違うとスムーズな回復ができませんので注意が必要です。
①額の生え際からハゲるM字ハゲ
男性によくあるパターンとして、M字ハゲが挙げられます。特徴はおでこから薄毛が進行していくことで、特に顕著なのが剃り込み部分であり、奥深くに後退していくことが多いです。反面、中央部分は進行が比較的遅いことがあります。この対照的な進行速度によって、M字型にハゲていくパターンであり、程度の差こそあれ薄毛が目立つ状態になってしまうのです。
このパターンでハゲてしまうのは、AGAが関係していることが多いのですが、改善が難しい傾向がある点に注意が必要です。生え際はAGAの影響を受けやすい上、毛細血管が少ない場所でもあるため、ハゲやすく回復をしにくい場所となっているのです。専門的な治療を施しても一筋縄にはいかないことが多く、改善ができる場合でも長く時間を要すことがあります。
②頭頂部からハゲるO字ハゲ
これもまたAGAによる影響で起こるパターンのひとつですが、いわゆるO字ハゲも種類に挙げられます。つむじ部分から薄くなっていく症状で、最初は気が付きにくい傾向があります。もともとつむじ部分は頭皮が少し見えている場所でもあるため、早期に気付くことができないことが多いのです。加えて、正面からは見えない場所でもあるため、気が付いたら進行していたというケースも少なくありません。
一旦薄くなり始めた場合、どんどん頭皮が見える面積が広がっていきます。軽度の症状ですとそこまで極端に薄くなっていくことは少ないものの、重度の場合ですと完全なツルツル状態になってしまうこともあるのです。頭頂部ゆえに隠しにくく、厄介なパターンとも言えるでしょう。
③前頭部からハゲるU字ハゲ
前頭部からハゲるU字パターンもあります。これはM字型の場合と同じく、前頭部から薄くなっていくのですが、M字型と異なっているのが、中央部分からも薄くなってしまうことです。かろうじて中央部分が残されているM字型と違って、おでこ全体が後退していくため、症状が顕著に見て取れるようになるのです。また、隠しようがなくなってしまいますので、余計に髪のことが気になりやすいと言えます。
ちなみに、U字もM字も、O型と並行して発生することがあります。つまり、前と後ろから同時に脱毛が進んでいくこともあり、最終的には両者が合体してしまうのです。するとハゲの面積が広くなってしまうことで隠すことがより困難な状況となってしまいます。
④若ハゲ
ハゲの症状は中年以降になると発生することが多いですが、一方で若くして症状が出てしまうことがあります。10代の後半から20代の前半に掛けて脱毛が起こることがありますが、いわゆる若ハゲと総称されています。
症状の出方は個人差があるものの、中年男性のように顕著なハゲに見舞われるケースも珍しくありません。ただ、若ハゲの場合に大きな違いがあるのが、改善できる可能性が残されていることです。
年を取ってくると細胞が弱くなっていきますので、髪の成長を取り戻すことも困難になってしまうところ、若い場合はまだ細胞が活発に活動していることが多いです。そのため適切に対策を講じることで、元のフサフサを取り戻せる可能性も十分にあります。
⑤脂漏性脱毛症
頭皮に起こる病気が引き金になる脱毛として、脂漏性脱毛症というものがあります。生活習慣の乱れやストレス、ホルモンなどの影響で皮脂分泌が過剰になることで起こる症状です。目立つフケの発生や頭皮ニキビ、湿疹などのトラブルを引き起こします。シャンプーをした後からすぐにベタつきが起こるため、そこから症状に気付くことも少なくありません。
頭皮環境が悪化してしまう原因には、マセラチア菌の存在が関係しています。
マセラチア菌というのは常在菌ですので、頭皮に存在していること自体は問題ありません。むしろ頭皮を保護するための役割を持っていますので、健全な状態を維持するためにも欠かせない存在です。ところが、分泌が多くなると過剰に増殖してしまい、頭皮を傷付けるようになってしまうのです。
⑥びまん性脱毛症
びまん性脱毛症は、主に女性に多く見られる傾向がある症状です。なお、びまんというのは、一面に広がるという意味を持っており、全体的に薄くなっていくのが特徴の脱毛症です。女性の場合は頭皮が顕著に露出するようになることは少なく、全体的に薄くなっていくのが主な脱毛パターンです。
症状が起こる原因としては、女性ホルモンの分泌減少が挙げられます。エストロゲンと呼ばれるホルモンには髪の成長を促進する働きがあるのですが、加齢などによって分泌が滞ることで脱毛が起こりやすくなってしまうのです。
強いストレスや間違ったヘアケア、無理なダイエットなども原因になることがあります。こうした影響で自律神経の乱れや血行不良を引き起こし、髪と頭皮に栄養が行き渡りにくくなることで髪の成長が滞りやすくなってしまうのです。
⑦粃糠
粃糠性脱毛症はふけ症と脱毛が合体した症状のことです。
特に思春期以降の男性に起こることが多く、頭皮のかゆみや赤みなどが引き起こされる傾向があります。ふけが多く発生する症状ですので、頭や肩などに細かいカスが目立つことが多いです。そして異常発生するふけは、髪の成長の阻害となってしまいますので、やがて頭皮が透けて見えるようになってしまうのです。
この症状に関しては、脂漏性皮膚炎と似ているところがありますので、同じ治療で対策をされることが殆どです。ただ、根本の原因が解明されていない点に特徴があります。ホルモンバランスの乱れやストレス、生活習慣などの影響で症状が深刻化することもありますので、基本的にはこれらに注意することが必要です。
⑧牽引性脱毛症の症状
牽引性脱毛症は、特に女性に関連する症状です。
主な発生原因として、ヘアースタイルの影響が挙げられますが、例えば髪を強く引っ張ることが多い場合は注意が必要です。牽引されることで毛根に大きな負担が掛かってしまいますので、それによって髪の育ちが悪くなってしまうのです。いつも同じヘアースタイルでいると、負荷の掛かりやすい部分から薄くなっていくことがあります。
毛根への負担を回避することが必要ですので、定期的にヘアースタイルを変えるようにしたり、分け目を変更して負担を分散したりするなどの対策が求められます。また、髪が長いことで重力の影響を受けやすくなり、下に引っ張られてしまうリスクもありますので、髪を短くするのもひとつの対策です。
⑨抜毛症※トリコチロマニア)
一般的な脱毛症とは特徴が大きく異なりますが、抜毛症もハゲになるひとつの理由に該当します。
これはトリコチロマニアとも呼ばれる症状ですが、自分自身で髪を抜いてしまうことを指します。特に小学生や中学生くらいの年齢に多く見られる症状であり、性別に関しては女性に多いのも特徴的です。
なぜ髪を抜いてしまうのか、原因としては欲求不満や精神的なストレスが大きく関係しています。やり場のない気持ちが髪へと向かい、意図的に抜いてしまうことがあるのです。一方では無自覚に抜いているケースもあり、自分では知らないところで行為に及んでいる場合もあります。
精神的な問題が影響していることが多いため、カウンセリングや精神神経科での治療を行うのが主です。行為を止めることができれば髪も回復してくるケースが殆どです。
ハゲの対策、予防
もしもハゲてしまった時、あるいは予防をしたい時には適切な対策を講じなければいけません。
症状が出てしまった場合でも対策を行うことで回復させることができたり、症状の発生を遅らせたりすることも不可能ではありません。しかしながら闇雲に対策を行っても効果は低くなります。髪のためにはどのようなことが必要になるのか、ポイントをしっかりと押さえ的確にハゲと向き合っていくことが求められます。
①生活習慣を整える
基本は生活習慣を整えることです。内容としては、まず栄養バランスの食事が欠かせません。髪と頭皮の健全な状態を作り出すためには、バランスの良い食事によって栄養補給を心掛ける必要があります。偏りのある食事では健康的な髪は育ちませんので、普段の食事を改めてみることが大切です。
ストレス対策も欠かせない要素のひとつです。自律神経やホルモンの乱れ、過剰な皮脂分泌などを引き起こすのがストレスであり、慢性的に負荷が掛かることで髪の成長が滞りやすくなってしまうのです。上手くストレスコントロールをしていく必要がありますので、例えば運動をしたり趣味の時間を持ったりするのも有効と言えます。
睡眠時間の確保も必須と言えるでしょう。眠っている時に髪は成長するため、十分な睡眠時間と良質な睡眠が必要不可欠です。
②頭皮への負担を減らす
頭皮への負担が増すとハゲのリスクが高まりますが、その点を踏まえ、シャンプーの仕方を見直してみることが大切です。頭皮に合わない物を使っていたり、不適切な洗い方をしていたりすると、頭皮への負担となり髪の成長を阻害します。頭皮は本来、デリケート場所のため、顔の肌をケアするように優しく行うことを意識することが大切です。
またヘアカラーやパーマなどを控えるのもポイントです。化学成分は負担になりやすいため、頻繁に行う人は注意しなければいけません。アレルギーが発症して脱毛に至ることもありますので、やたらにカラーリングなどをするのも考えものです。
その他にもドライヤーのかけ方にも気を配った方が良いでしょう。頭皮を熱してしまうとダメージになるため、同じ場所に当て続けないなどの工夫が必要です。
③髪と頭皮を考えたシャンプーを使う
ヘアケアを効果的に行うにはシャンプー剤選びも大切ですが、いわゆる育毛シャンプーを使用するのもひとつの対策です。髪と地肌のための成分構成になっており、また、髪にハリコシを与えボリュームアップさせる働きにも期待ができます。
選び方のポイントに、アミノ酸系シャンプーを選ぶことです。アミノ酸系の洗浄成分が用いられているものですと、頭皮への負担が小さく、洗い過ぎになってしまう心配がありません。適度な皮脂を残しながら洗うことができますので、乾燥が気になりがちな人でも使いやすいです。
無添加処方になっているかどうかもチェック項目です。余計な成分が含まれていると負担になってしまうため、極力排除されているものが理想的と言えます。
④育毛剤・発毛剤を使う
育毛剤や発毛剤による対策も効果的です。
なお、両者は似て非なる特徴を持っていますので、選択を誤らないように注意が必要と言えます。育毛剤は今生えている髪を育てるための成分構成となっており、発毛剤は新たに髪を生やすための物です。ハゲてしまった場合は、基本的には発毛剤を用いるのが有効と言えるでしょう。ただ、育毛剤でも発毛作用のある成分を含めている物もありますのでその限りではありません。
選び方としては、成分をよく確認することが重要です。どのような効果がある成分を含めているのかをチェックしながら、育毛及び発毛への効果を見極めなければいけません。しかし、効果の高い成分は頭皮への負担になりやすいため、デリケートな頭皮状態ですと逆効果になることも考えられます。
⑤クリニックを利用する
クリニックへ行き治療を受けるのもひとつの選択肢です。セルフケアによって回復ができるようならそれに越したことはありませんが、髪のトラブルを自己流の対策で改善するのはハードルが高いのが実状です。容易には髪が生えてこないことも多く、症状もどんどん進行していってしまうこともあるのです。
そうした場合はクリニックで専門治療を受けるのも良いかもしれません。
現在では発毛のための効果的な治療が確立されており、実際に回復ができたケースも多くあるのです。また、専門医により原因を的確にチェックしてもらうことができるため、それに適した対策を講じていくことができるのです。ただし重度の場合ですと完全な回復ができないこともありますので、早めに相談へ行くことが必要です。
⑥植毛する
発毛治療の中でも効果的な対策として、自毛植毛をする方法があります。
自分の毛根をドナーに用いる治療ですが、生える力のある毛根を薄くなっているところに移植することで、高い確率で発毛をさせることができるのです。人工の毛髪を植毛するという方法もあるものの、自毛の方が定着する可能性が高く、拒絶反応を起こしてしまうリスクも低いです。それに、自毛なら繰り返し生えてきますので、人工毛のように抜けてしまう心配もありません。
とは言え、自毛植毛は自分の毛根を用いるということもあって、すでに症状が進行している場合ですと選択肢に持ちにくいとも言えます。また、薄くなっている部分をカバーするためにはそれなりの量が必須という短所もあります。
まとめ
ハゲは髪のトラブルの中でも特に厄介であり、悩みに感じている人も大勢います。中でも若い世代や女性の場合ですと深刻な悩みに感じがちで、大きなストレスやコンプレックスになってしまうこともあるのです。
しかし適切な対策を行うことで改善できることもあります。原因をきちんと理解した上で手段を講じれば髪は蘇る可能性を秘めています。一見するとなくなったように見える場合でも、毛根自体はまだ生きていることが多く、サポートさえあればまた生えてきてくれるのです。
ただし、いつまでもチャンスがあるわけではありません。細胞が弱くなってしまうと生える可能性が低くなりますので、手遅れにならない内に対策をすることが大切です。したがって、髪のことが気になりだしたら放置せず、速やかに策を練っていくようにしましょう。